未成年者の家出

未成年者の家出は、7月~9月の間が最も多く、夜間に徘徊していることで事件に巻き込まれる危険性が高いと言われています。
特に夏休みを共に過ごした友人・先輩などの影響を受けて、9月に入ってからも学生生活に戻れず、家出の末に事件に巻き込まれるなど深刻な事態に発展するケースも確認されています。
また未成年のSNS利用者が増加したことにより、初めて接触を持った相手と危険な行為に及ぶケースなども増えてきています。

昨年は緊急事態宣言の影響でネットカフェ難民が続出した際に、ネットカフェに宿泊できなくなった家出少女が『神待ち』と称して、SNSに無料の宿泊先を求めて投稿を行うケースが後を絶たず、これに群がる男性陣の多さに騒然としたのも記憶に新しいところです。

そして警察に捜索願を出しても家出時の状況に不審な点や事件性がないと判断されますと、積極的に捜索されることはありません。

今回は弊所が実際に保護した未成年者の家出事例をもとに、最近の傾向やご家庭でのお子様との接し方などの参考にしていただければ幸いです。

手掛かり

ご友人の紹介により都内在住で母子家庭のAさんから「息子(以下、Bくん)が家出をして2日経つけど帰ってこないので心配している」とのご一報を受けました。早速ご自宅に伺い、Bくんの部屋を見せていただくことになりました。Bくん、当時18歳・大学休学中

警察庁生活安全局生活安全企画課が本年6月に発表した「令和2年における行方不明者の状況」によると家出を含む行方不明者の届出総数の85%が警察又は届出人等に於いて所在が確認されており、1週間以内に所在が確認されたケースが実に87%を占めています。

したがって本件も、まだ十分に発見に至るケースだと判断して、捜索を開始する前に入念に手掛かりを得ることに努めました。

10歳代~20歳代の家出の場合、その発見先として交友関係や趣味嗜好に関わる場所が大半を占めます。しかし近年では、本人すら会ったことがないSNS上で知り合った人物でさえ交友先として捜索関係先になり、また何でもインターネットで検索することが主流になった現代では、部屋に残された趣味嗜好に関わる雑誌やグッズなどから手掛かりを得られることは少なくなりました。したがってご家族からのお話やデジタル上に残された些細な情報やわずかな痕跡も見逃すことなく手掛かりとして扱うことが重要となります。

捜索

Aさんからお聞きしたお話やBくんの部屋で得た手掛かりを基に捜索範囲を絞り込む為に仮説を立てます。捜索範囲をある程度絞り込めたらその地域について内偵を行います。

複数の候補地域で同様に内偵まで済ませたところで、発見の可能性が高いと判断した順に優先順位を決めて捜索を開始します。
Bくんの場合は、広島県某所が最も優先順位が高かったので同所を最初に捜索することになりました。実に東京から750kmほど離れた地です。

早速調査車両で出発です。
お昼前に事務所を出て広島県某所付近に到着したのは、22時を過ぎていました。

同所周辺は既に街が寝静まっている様子で路上を往来する人もなく、翌日から本格的な捜索を開始することにして当日の宿を探そうとしている時でした。

発見

最寄の駅へと続く、シャッターもすべて下され薄暗い商店街をピンク色でロング髪のウィッグを付けミニスカートをはいた若い人物が、歩いているのに気づきました。念の為に近づいてみるとAさんから提供していただいたBくん顔写真と同じ位置にほくろがあるアニメコスプレの様な女装をした少年でした。

調査員:「Bくんですよね?」

少年:高い声で「違います。」

調査員:「大丈夫ですよ。ご家族の方から捜索を依頼された者です。怪しい者ではございません。」

少年:高い声で「違います。」

調査員:「私たちもプロですから、目鼻立ちやほくろの位置などでBくんと同一人物だということはわかります。」

少年:「・・・・・・・・・・」

調査員:「家を出たのには何か事情があったのですね?」

少年:「・・・・・・・はい。」

調査員:「場所を移動して、ゆっくりお話をお聞かせいただけますか?」

少年:「はい。」

こうしてBくんを無事に発見することが出来ました。

保護

お子様が家出をする理由として、家庭環境への不満や家族には言えない事情を抱えている場合が多く、発見しても帰宅することを頑なに拒み、隙をさがして逃げ出そうとしたり、帰宅後に家出を繰り返すようになってしまうことがよくあります。

発見後にご自宅へ無事送り届けるまでの保護中は、逃げ出すことが無いように細心の注意を払うことは勿論のこと良き理解者として十分に寄り添うことを心掛け家出の再発防止に努めます。

このケースでも発見時のBくんが女装していたことなどから家族には言えない事情や不満を抱えている可能性は否めません。またご自宅まで750kmの長距離移動になることから、私たちとの信頼関係が崩れるようなことがあれば、逃げ出す機会はいくらでもあり、帰路の途中で失踪してしまうと再捜索は困難になってしまいます。したがってBくんとコミュニケーションを十分に取り信頼関係を維持しながら慎重に保護を続けることが重要なミッションとなりました。

深夜まで開いているファミリーレストランへ向かうことになり、移動の車中で商店街を歩いていた理由や所持金について尋ねると、所持金は数百円しかなく泊まる当てもなかったので徘徊していたようです。

家出中の少年少女が夜間に街を徘徊していて事件に巻き込まれるケースも多発していますので、保護できたことに調査員一同が安堵したのをよく覚えています。

Bくんはファミリーレストランで食事をのどに詰まらせそうな勢いで食べ始めました。聞くとその日は食事を一切摂っていなかったようです。空腹が満たされ始めると堰を切ったように家族のことについて話を始めました。

調査員:「すごい食欲だね。お腹空いていたんだね。」

Bくん:「違うんです。家では食べれないんです。」

調査員:「どういうことですか?」

Bくん:時々興奮して吃音(きつおん)症状で「母と2人で暮らしていて、は、母が働きに出ていると近くの祖父の家で、しょ、食事をします。」

調査員:「ちゃんと聞きますから、ゆっくり落ち着いてお話しされて大丈夫ですよ。」

Bくん:「はい。そ、それでもう食べなくていいって」

調査員:「それはおじいちゃんから言われるの?」

Bくん:頷きながら「は、はい。」

調査員:「もう食べなくていいって、何か理由は思い当たらないですか?」

Bくん:「お、お、遅いって。」

調査員:「食べるのに時間が掛かっているということですか?」

Bくん:黙ってうなずく。

調査員:「ところで、小学校とか中学校は給食だったの?」

Bくん:「はい。」

調査員:「給食は時間が決まっているけど、時間内に食べられましたか?」

Bくん:「・・・・・・・・・・・はい。」

調査員:「何も残さずに?」

Bくん:黙って首を横に振る。

調査員:「そうか。急かされたりして気持ちが焦ってしまうと食べられなくなってしまう感じですか?」

Bくん:大きくうなずく。

 

こうして移動したファミリーレストランで、食事の話に始まり家族との関わり方などについて話を進めていくと、母親(Aさん)に対しては過干渉に辟易としている様子で、祖父母に対してはネグレクトを受けている子供に近い被害感情を持っている様子でした。また、Bくん自身が(東京の)家に戻りたくない意向を示していました。

いずれにしても、このまま帰宅をしても家出を繰り返す危険性は高く深夜の時間帯であったことからファミリーレストランを出て、その晩はBくんに宿泊施設で休んでもらうことにしました。

翌朝、Aさんに、Bくんの内面的な情態を含め、強引に連れ帰っても家出を繰り返す危険性があることをお伝えしました。

当然のことですがAさんは、是が非でもBくんが帰宅するように説得して欲しい旨を述べていました。

説得

お昼まで滞在できる宿泊施設だった為、Bくんにはチェックアウトぎりぎりの時間まで休んでもらいました。

ロビーに降りてきたBくんは発見時と比べてとても元気な様子でデニムパンツにTシャツ姿で女装はしていませんでした。

Bくん:「おはようございます。」

調査員:「おはようございます。昨日の服装も似合っていたけど、今日は年齢に合ったさわやかな感じで良いですね。」

Bくん:黙って照れくさそうに微笑む。

調査員:「もうお昼過ぎだし、お腹空いているんじゃない?」

Bくん:「はい。」
調査員:「じゃあ、お昼でも食べながら昨日の続きでお話を聞かせてください。」
Bくん「はい。」

しっかり休めて疲れが取れたのか、Bくんは素直に応じてくれました。

Bくんは、家族の話になると多少興奮している様子は見られるものの、前日と違い吃音症状もなく終始落ち着いてお話をしてくれました。

この時話してくれたBくんの意向をまとめると、以下の通りでした。

*休学中の大学は退学して広島県某所(発見場所)付近にて住み込みで働きたい。

*経済的に余裕が出来たら1人暮らしを始めて自活していきたい。

*家族ともう会うつもりはない。

この意向に対して、私たちはBくんに現実的なお話をさせていただきました。
*未成年者が働く場合には、保護者の同意を求められることが多い。
*未成年者の場合、部屋を借りる時に保証人を保護者に求めるケースが多い。
*家族と会うつもりがなくても、何かあった場合には必ず保護者に連絡が入る。

Bくんには成人するまで希望を叶えるのを待てないか確認しましたが、頑なに拒んだため、今の社会制度では(前述の通り)逃れられない現実があることを伝え、Bくんの意向を尊重して、希望を叶えられる方法があるとしたら保護者の了解を得る他にはないことを理解してもらいました。そして話し合いの公平性を保つために私たちが立会いの下でAさんと話し合いをすることで納得してもらい、一緒に東京に戻ることになりました。

 

BくんはAさんとの話し合いの上、多少の紆余曲折はありましたが、現在は大学に復学し卒業を目指して頑張っています。

最後に

今回ご紹介したケースでもBくんは、私たちが保護しなければ夜通し街を徘徊していたことでしょう。何かの事件に巻き込まれていても不思議ではない状況にあったと言えます。そして家出の原因は家庭環境に起因することが多い為、無事に保護され帰宅した場合もお子様としっかり向き合い、繰り返し家出をしない環境を整えることが大切です。

前出の「令和2年における行く不明者の状況」によると、10歳代の家出を含む行方不明者数は、平成28年・17,118人、平成29年・16,412人、平成30年・16,418人、令和元年・15,572人、令和2年・12,860人と推移しており、昨年は3,000人ほど減少していますが、この一因は新型コロナウィルス感染拡大による人流の抑制が影響しているものと思われ、一時的な減少と捉えて間違いないでしょう。

そんなコロナ禍に於いても10歳代は依然として年間に1万人を超える行方不明者が認められているのが現状です。是非ご家庭内でお子様とのコミュニケーションを積極的にされるように心掛けてください。

そして万一、お子様と連絡が不通になるようなことがございましたら、発見率の高い1週間以内を目途に専門機関へご相談されることをお勧めいたします。

キャンペーン概要

種別:所在行方調査
対象:未成年者の家出に関する行方捜索
内容:着手金20% off 発見成功報酬 応談
期間:令和3年9月1日~9月30日

※料金表はこちら「所在調査」欄をご参照ください。